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7月11日(土)13:00〜、7月18日(土)18:00〜、7月26日(日)13:00〜の三公演に行って参りました。
知人から「さんま×生瀬×水田タッグでいちばん面白いのはこの作品」という噂を聞いていたので、張り切って三公演申し込んでいたのですが、申し込んでいて良かったです!
11日のみ中尾明慶氏の出演回で、残りは恵俊彰氏出演でした。
東京公演は終わりましたが大阪公演が残ってみるので、ネタバレ見たくないよ、という方は以下ご注意くださいませ。
三回も見たのに、台詞がうろ覚えなので、間違っていたら申し訳ありません(陳謝)












第二次大戦下で中国に出征した部隊が総員突撃するまでの物語ですが、三時間(休憩なし)ほぼほぼ笑いっぱなしで過ごせるという、さんま氏のお笑いモンスターっぷりがいかんなんく発揮されております。
基本的に、出演者の方々がさんま氏をとてもとてもリスペクトしているのが感じられるカンパニーなのですが、この作品から始まったのですね。
初演は15年前でしたが、暇課長がバラエティ番組に出まくるようになるんなんて。
何せこの舞台で兵士役をやるからトリックの矢部が被り物という設定になった、というのは有名な話ではないかと(当人比)
てか、この後が浅倉か…!!!!!

生瀬氏の脚本は、ストーリーが分かりやすい、というか入りこみやすいですよね。
登場人物も少なめで、反体制側だったり、体制にのみ込まれまいとしている市井を描く、というのが共通点かな、と思います。
さんま氏をフィーチャーしすぎでやり過ぎ感がある、という意見も分かりますが、多分さんま氏が演じないと一時間くらいで舞台終わっちゃう(爆)
どこまでが脚本で書かれているのか、毎回とても気になります。
さんま氏の笑いを出そうとするので、分かりやすいストーリーにしている、というのもあるかもしれませんね。
それに加えて「さんま氏をカッコ良く描く」というのが、毎回感じられます。
それをまたさんま氏が見事に演じられるのですよね。
このカンパニーを見始めた頃は「さんま氏、自由奔放すぎ! もっと生瀬氏を…!」と思っていたのですが、何回か拝見するにつれ、さんま氏が自由にやれる(ように見える)舞台を作るのがこのカンパニーの目的なんだな、と思い始めると「さんま氏カッコイイ!」視点で見れるようになりました(笑)<テレビ番組で拝見する時もカッコイイ!度がアップするのですよ!
生瀬氏の理想のカッコイイ男像がさんま氏というキャラクターなのかな、と毎度思うのです。
今回(というか、本来はこれがいちばん最初か)は特にそれが顕著に表れている気がして、劇中の「バレない嘘が真実だ(美しい、だったかな…)」というのが何よりの台詞ではないかと。
「死ぬ直前まで遊んで生きてやる」というのも、さんま氏を端的に表しているんじゃないかと。
遊びと表現されるものが水嶋でありさんま氏の生き様なような気がします。
常に笑いを振りまいて、笑いを振りまくためのひたむきな努力と嘘。さんま氏のプロ根性はスゴイですし、水嶋の「他人を幸せにする嘘」の精度もスゴイ。人物造形が本当に深いです。
さくらちゃんが惚れるのも分かりますとも(^^)

水嶋と木下とさくらちゃんであり吉永さんの関係も巧いですよね。
妹には「全体的に嫌い」と言われ、幼なじみには「昔っから鈍くさかった」言われる木下よりも、お笑いのセンスがありコンビの主導権を握っているのは水嶋なのに「戦争が終わったらまた漫才がしたい」と言うのは水嶋なのです。
博打で負け姿をくらましていた引け目もあった(いや、ないかな)からかもしれませんが、「ツッコミのいないボケはただのアホや!」という台詞が「他の人間が俺にツッコミを入れられるか!」と言っているような気がして、凄まじい独占欲があったんじゃないかな、と。
天才肌の水嶋と比べると木下は凡人ということを理解してしまっているから、招集前はお笑いをやっていたことは部下に隠していたし、舞台をすっぽかし芸人としての先を閉ざしたばかりか恋人である妹の死に目にもいなかった水嶋を殺そうとしていたくらいだから、木下にはもう一度お笑いをやる、という発想はなかった。
「オマエみたいな明るさが敗戦国には必要だ」と言うのが、自分にない才能を水嶋に認めてるんじゃないかと思うのです。
それに近い才能を持っていたのがさくらちゃんであり吉永さん。天性のお笑いセンスを持っているからさくらちゃんは水嶋に惚れたのだと思いますし、最後の水嶋の呼び掛けに応えたのが吉永さんだったんじゃないかなと思います。
「笑いすぎて死んだ人、何人かおるんちゃう?」と冒頭でさくらちゃんがうそぶき、「笑いすぎて死なんようにな!」と叫ぶ水嶋に対して「殺せるもんなら殺してみなさいよ!」と吉永さんは絶叫する。見えないラインがこの三人にはあったんじゃないかな。
(ただ、吉永さんは水嶋には好意を持っていませんけどね。あと、さくらちゃんが入院時にどうして水嶋が見舞いに来ないのかという質問に対して木下は「笑いすぎて死んだ人の弔問に行ってる」と答えるものの、即座に「嘘」と切り捨てられているので、木下がこの台詞を言えるのはラストだけなのかなあ、なんてね)
ラストで木下に受け答えするのが片岡、というのも巧いですよね。根本的に似た者同士なのだと思います。この二人は。上官受けが良いことは分かるけど、部隊での人気はない。笑いを理詰めで考える(もっと端的になると西口くんになっちゃいますけど)
だからこそ、若葉ライトレフトになって、バランスが良いコンビになったのでしょう。

それにしても、劇中で水嶋がついた嘘の数々!
「謎の高熱」「兵隊さんの時間」「音楽関係(歌を習ってたとか、絶対音感とか)」「名簿順」「オオカミ関係(呪術かじってるとか、年寄りとか)」「反省してる」
ストーリーの根幹となるのは「兵隊さんの時間」ですが、後に「部隊内のモチベーションの維持」のためについたと言っています。
あとは「名簿順」というのは、仲間を売ってしまったと後悔する片岡のために吐いた嘘。
咄嗟に状況だったり人だったりを見抜く力が凄すぎます。
嘘からで真実で兵隊さんの時間は実現してしまいますし、小沢が前線へ送られた、というのも真実は軍曹の近くにいたから、ということが判明しますし、この物語の中では水嶋の嘘で皆が救われている。
「水嶋さんの嘘はアタシを幸せにしてくれる」さくらちゃんの言葉どおりです。
出たとこ勝負のような嘘の数々ですけどね!

書きたいことがありすぎて、何から書いて良いか分からなくなってきているので、もう思いつくまま書いていきます。
片岡がWキャストだったのですが、中尾氏の場合は「浅草から来た」、恵氏の場合は「鹿児島から来た」、と役者さんに合わせて役の出身地が変えられているというのも芸が細かいな、と感じました。
というか恵氏! 自分の中ではレディクラで金曜日に岸谷五朗氏と喋っていた、というイメージがいちばん強くて、次点がエアホッケーの方なのですが、演技されているのを初めて拝見した気がするのですが、さんま氏との掛け合いはさすがお笑いの方! でした。
「どこまで自由なんですか!」とは、役者さんではなかなか言えない台詞な気がします。
役者としては中尾氏の片岡のほうが見やすいな、というのはあったのですが、あてがきで書かれていたというこの部隊では恵氏のほうがしっくりきますね。
腹の底が見えないというか、手の内を明かさないというか、そんな昏さを表現するのは恵氏は巧いですよね。
それにしてもWキャストの理由が劇中で明かされるとは思ってませんでしたw(吉永さんに自己紹介する場面で「平日の昼間は詰まってますけど」というのがあってから星取り表を眺めてみたところ、生放送がある時は中尾氏になっていたことに気付きましたw)
ラスト、師団に報告する役を元通信兵の片岡が請け負いますが、その報告が「総員突撃。自分を含めて七人ぐらい戦死」と言うのが絶妙な台詞です。結局、片岡の生死は劇中で描かれていません。そして、部隊を通して最後の台詞が「大日本帝国、まんざーい!」なのですよ。
体制への反旗を翻したのか、それとも…。
個人的には熊田が突撃する時に「相方−!」と叫んだのが印象的でした。漫才の練習をして二週間ぐらいでしたが、それでもお笑いを媒介に少しでも心を許せる人間だったのかもしれません。
あ、軍曹のモノマネは恵氏のほうが上手かったです!

「オマエら三つ子か!」は、初演の時からあったのでしょうか?(ワルシャワでは言ってましたw)
温水氏との掛け合いシーンがあるからこそ、最近でのバラエティでの共演があるのでしょうね(「俺の好みの女性!」との要求に大竹しのぶ氏のモノマネで返すのは、台本どおりなのでしょうかw)
乙松は深沢氏へのあてがきだったというので、なんかいろいろ納得でしたw(ヒロコママのイメージが強くてw)

お笑いパートも純粋に毎回楽しめたのが、何度も観たくなる要因だったのかなあ、と思います。
木下が水嶋の銃に細工をして暴発させようという演習シーンが、最もさんま氏が自由になっていたシーンなんじゃないかと思います。
二回目の時は「今日は土曜の夜だから、何時まででも…」とか、千秋楽は「今日で最後だから、何時間でも…」(最終日は10分オーバーでしたとも♪)
毎度、このシーンでぶち切れる生瀬氏を拝見するのが楽しかったですw
最終日の「オマエが辛くなるだけだからな。昨日からさんざんはしゃぎやがって…」「それがね。思ったほど辛くないの♪」さんま氏のアドレナリンだかドーパミンだかが凄すぎますとも!
「なんか喋れや」「オマエにかける言葉が勿体ないわ」「昔のオンナにも同じ事言われたわ!」まさかのしのぶ氏ネタが漫才練習の前に飛んでくるなんて!
「頼むから撃ってくれ。撃ったら進むから…」というのは生瀬氏の心の叫びダダ漏れだったのでしょうねw
「コクーンでコクン」を聞いたのは自分は二回目だけだったのですが、テレビで言ってしまったから最終日は言わなかったのかな。
実際、最終日はちょっとツラそうでしたが、27時間テレビの時の方がツラそうだったので、そのテンションの上げ方にもプロ根性を感じましたさ!(大縄飛びしてくれなくて良かったですとも…!)
最終日に絶対音感のくだりで、シューベルトのところをシュバイツァーと言ってしまったのですが、そこからでも笑いを広げていく強さは流石でした。そういえばワオワオ練習の時に二回目では西口の名前を間違えて呼んでましたが、それも後から「なんでそこを流すんや!」と言われてましたからね、もう、笑いに貪欲すぎて、ついていけませんよ、はい。

つらつらと書いてきましたが、もうね、ラストシーンの格好良さがすべてでしたとも。
死地へ赴く二人のシルエットが美しすぎます。二回目は三列目での観劇だったのですが、さんま氏はちゃんとカッコ良く見えるシルエットを微調整されてるのが見えたのです。ああ、凄いなあと感じたところです(近くで拝見してビックリしたことは、一文字眉子の時にはちゃんと眉墨を一文字に引いていたこと!)
さんざん、隙あらば脱走しようと企て、「死にたくないわけじゃない。生きたいだけや」と言っていた水嶋が死を選ぶ。
さんざん、水嶋に軍隊の規律を求めていた木下が、「もういい。オマエは逃げろ」と水嶋を赦して突撃を覚悟する。
最後に漫才コンビとして、敵性語である芸名を名乗って「これで銃殺もんじゃ!」と見得を切る。
「ワシはツッコミだから、突撃するのは得意だ。そしたら、その間に逃げろ」「ツッコミがいないボケはただのアホや」「オチを言う前まで死ぬなよ」「はじめてのオオトリだ!」「喧しい出囃子じゃのう」
なんかね、三回目は最後というのもあったからかもしれませんが、自分の涙腺が決壊してしまいましたとも(TxT)
思えば、脱走する度に水嶋は木下を連れて行こうとしていたような気がします。毎回、木下に見つかりすぎでしょ(いや、水嶋の性格を読み切ってる木下が上手なのか!?)
部隊から離れることが何より死を遠ざけること、ということを本能のままに実行しようとしていたのでしょう。それが規律にがんじがらめにされている木下には通じない。
片岡がオオカミに食われて自死しようとした場から離れようとした時に、一人反対方向へ歩く木下に向かって「なんでやねん!」というのがその表れなんじゃないかと。
木下も片岡と一緒に来るもんだ、と思っていたからこその「なんでやねん!」だと思うのです。
その後、木下がとり目だと分かるとあっさり見捨てちゃいますけど(笑)
なんで死のうとしているのか、この馬鹿は。ラストに至ってもそれは変わらなかったわけですが。
最後の最後で馬鹿を選ぶ。それが水嶋であり、さんま氏の優しさなのかな、と感じたのです。
生きること、それを諦めること、紙一重の判断なのでしょうね。


とても個人的な感想になりますが、この舞台を観る頃の自分は死にたい死にたい、と厨二病が炸裂している時期だったので、ストレートに死を扱ったこの作品が衝撃的でした。
「生きたいヤツは生きればいい」その通りだと思います。
「突撃で死ねたら幸せよ。訓練中の事故や、銃の暴発で死ぬ人たちに比べたら」皇国臣民としてはフツウの感覚だったのでしょう。
「死ぬ時は、みんな優しい顔になる」吉永さんの死生観は、ちょっと自分には受け入れがたいのですが、戦時下ならこれがフツウなのでしょう。現代のような緩和治療などなく、死は苦痛からの解放なのでしょうから。
「戦争してるんだから、誰かが死ぬのは当たり前のことだ」水嶋のリアリストっぷりは徹底しています。
「笑いながら死にたい」……精一杯のシアワセ。

なんか他にも書きたいことがあったような。思い出したらちょいちょい追記していきたいと思います。

あ、そうだ。千秋楽の舞台の一体感がとても良かったのですが、この舞台、大阪で観たらまた違うのかな(冒頭にヤジが飛びまくるとかあるのかな…?)
と思って大阪公演の予定を観てみたら、ああ、観に行けないスケジュールでしたともorz
夏休み、舞台に合わせて取れば良かった…(遠い目)

それから。さんま氏は当たり前なのですが、お笑いの基本がとても上手だなあ、と改めて思いました。
お笑い論を語るくだりしかりですし、首落ちもフツウにお上手でビックリしました!(リハーサルから軍曹は観たことないって、そりゃそうですよね…)
そして最終日、花札を思い切りよく投げすぎです…!(もう、拾いに行く恵氏のビビリっぷりが半端なかったです)

それからそれから。さんま氏の金銭感覚がとてもフツウなことにも驚きました。
「高いお金を払って頂いて〜」のようなことを二回目の時に言われていて、娯楽として九千円はやっぱり高いよね、とちょっと思った次第です<いや楽しいんですけどね。特にこの舞台は問題ないです!
いろんな意味でさんま氏は凄かった、と感じた舞台でした!

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